岩手県立美術館


   1945(昭和20)年、盛岡市に生まれた宇津宮功は、1967(昭和42)年、武蔵野美術大学
  を卒業と同時に渡仏、以来現在にいたるまでフランスを中心に活動しています。

   作家の画面に繰り返し登場するのは、鮮やかな色彩と折り重なるように交じり合う人物。
  「画面上で繰り広げられる一体感、合体は、孤立しては生きていけない人間の本質
  根ざす欲求にかかわる」とする宇津宮は、初期の「干渉」シリーズから最新の「非・場」シリーズまで、
  一貫して人間とそれを取り巻く環境や社会をテーマに作品を描きつづけています。

    
1970年代からの「折りたたまれた人間達」シリーズにおいて、折り重なり、溶け合いながら
  画面上を舞うのは、社会の軋轢に苦しむ人間達を表した人物像やその身体の一部。
  これらの作品は、スプレーと型紙を用いて制作されており、画面には豊かな色彩と独特の
  浮遊感がもたらされています。1980年代に入り、「風土」への関心を強めた作家は、
  かつて、松尾鉱山の廃水で汚染された故郷の北上川をモチーフにした
  「黄色い河」シリーズを手がけています。
  これまでの色調から一転、茶や寒色を使用した厚塗りの画面に登場する人物は、
  原始の神々を表した古代彫刻のようなしっかりとした形態を持つようになります。

    その後、宇津宮は、森林破壊による種の絶滅を食い止め、自身のイマージュを保護する
  楽園を措いた「生物圏保護区」シリーズを経て、何事にもとらわれない、より自由な場を求めた
  「非・場」シリーズへと歩を進め、現在も国内外で個展を開催するなど、旺盛な創作活動を行っています。

岩手県立美術館 特別展示パンフレットより引用




宇津宮 功氏 マスク 干 渉 折りたたまれた人間達
No.25
折りたたまれた人間達
No.80
折りたたまれた人間達
No.177
黄色い河No111 ベゴニアの平原
生物圏保護区No.207 生活圏保護区No.261 非・場No.56 非・場No.82

         「干渉」は、型紙を使いスプレーで塗料を吹き付けている。
         内臓を思わせる有機的な形と、瓶や剣など無機的なものが交じり合い、独特の浮遊感が漂っている。

         1970年代の「折りたたまれた人間達」シリーズ3点。
         踊るような人間や体の一部分が豊かな色彩で描かれ、孤独では生きられない人間の根源的な欲求を表現している。

         80年代以降は筆を使い、油彩で「描くこと」を再開している。
         「黄色い河」シリーズは、松尾鉱山の廃水で濁った北上川の原風景と結びついている。

         「生物圏保護区」は森林破壊による種の絶滅をイメージの危機ととらえている。
         狭められる生物圏の中に生きる人間と生物の間のような生き物を装飾性豊かに表現。
         
         最も新しい「非・場」シリーズは場のない自由な空間イメージし色数を絞って整理された画面構成となっている。

                                                                     岩手日報より引用

                                             岩手県立美術館 特別展の一部を撮影し紹介しました。

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